労務問題

事業提携

1.事業提携とは

事業提携とは、資本の移転をさせずに、事業者同士が特定の業務に限定して協力をし合うことを指します。「業務提携」と呼ばれこともあります。

事業提携することで、自社にはないノウハウや技術、販売経路などを得ることができますが、自社のノウハウや技術も提供することになるので、それらが外部に流出してしまうリスクもあります。そのため、提供したものが外部に流出しないよう、契約書で明確にしなければなりません。
また、一言に「事業提携」といっても、様々な種類がありますので、種類ごとに注意するポイントも異なります。ここでは、主な事業提携と、そのポイントをご説明いたします。

2.生産提携

生産提携とは、製品を生産する工程などの全部、もしくは一部を委託することです。委託側にとって、生産能力の向上が可能になり、製品の安定供給することができます。受託側にとっては、委託側の水準を満たす製品の開発を求められるので、技術向上などを図ることができ、委託者・受託者双方にとって、メリットがあります。

生産委託契約を結ぶに当たって、注意するポイントは下記です。

■仕様の明確化

製品の生産を委託する際、委託側で生産する製品と同様の品質で生産することが求められます。生産を委託する際、求める素材や製法など、製品を仕様を明確にしておく必要があります。また、納品期間や納品数なども明確に決めておくことも重要です。

■商標利用の明確化

受託側は製品の生産を任せられているだけですので、商標の利用や販売などまで認められていません。そのため受託側が第三者に商標を利用や、販売ができないことを明確にする必要があります。

■再委託の禁止

受託者が第三者に生産を再委託してしまうと、製品のノウハウ・技術が外部へ漏洩してしまいます。委託側にとって、情報の流出は最低限に留める必要があるため、受託側の再委託は禁すべきです。

3.販売提携

販売提携とは、製品を製造する能力が高い企業と、製品を販売する能力が高い企業間で行われる提携です。新商品や新企業などを行う際に、強い販売ルートを持つ企業と販売提携を行うことで、製造元は新規店舗を展開するコストを、販売元は新製品を開発するコストを抑えることができるという点で、双方にとってメリットがあります。
また、類似の提携に販売委託契約、代理店契約などがあり、フランチャイズ契約は代理店契約の一種となります。

販売提携契約を結ぶに当たって、注意するポイントは下記です。

■販売価格

受託側が販売した金額が売り上げになるため、委託側は、受託側に対して販売価格を決定することができます。受託側の方で価格を変更できるようにしないために、販売価格の決定権を明確にしておく必要があります。

■業務の範囲

販売という業務の一部をお願いする以上、委託側は受託側に販売について、業務の範囲を定める必要があります。販売方法、売り上げ金の回収など、明確に決めておかないと、後々トラブルに発展してしまう可能性があります。

■競業避止義務

受託者が委託者より委託されている製品と類似の製品を同じ販売ルートを使用して販売した場合、委託者の利益が減ってしまう可能性があります。このようなことが無いよう、委託者は、受託者に類似製品を販売しないよう、義務づける必要があります。

■独占禁止法

フランチャイズによって店舗を展開する際、フランチャイズ本部が自社に都合のいい契約条件を盛り込み、加盟店を不当に扱った場合、独占禁止法違反になる場合があります。

4.技術提携

技術提携契約は、複数の企業が持っている技術や人材を用いて、新しい技術や製品の開発を行うための契約です。開発のスピードアップや、双方の技術提供による新技術の開発、コストの低減などのメリットがあります。

技術提携契約を結ぶに当たって、注意するポイントは下記です。

■業務の範囲

双方の技術や人材をシェアしあうことになるので、どこまで、どのような作業をするのか、業務範囲を明確にしなければ、際限のない契約になってしまう可能性があります。そのようなことがないよう、行う事業や業務の内容を明確にする必要があります。

■知的財産権

技術提携中であっても、双方が元々保有する技術や製品の知的財産権は開発元のものだと、明記する必要があります。また、共同で開発した製品や技術の知的財産権については共同で権利を保有するものとも定める必要があります。

■競合製品取り扱いの禁止

技術提携中は、双方の技術や製品の情報などを提供しあったうえで、独自に自社製品を開発することになります。その際、提供された技術や情報を元に、類似製品を製作されないよう、明確に定めておく必要があります。

上記の通り、事業提携はメリットも多数ありますが、少しでも契約を誤ってしまうと、後々事業に多大な損害を与えてしまう可能性があります。事業提携を考えている場合、安易に自分たちで契約書の作成・チェックをせず、専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。