相続

相続

1.遺産分割が必要な理由

  • 相続財産の中に銀行預金がある場合、「遺産分割協議書」がなければ銀行は預金口座を凍結し、遺族がお金を動かすことができなかったり、不動産の登記を移転することもできなかったりするため、遺産分割協議をして協議書を作成する必要があります。

  • 遺産分割協議をきちんとしないまま財産を使用してしまうと、のちのちトラブルになる場合があります。

2.弁護士介入のメリット(遺産分割協議に弁護士が必要な理由)

  • 相続人同士のさまざまな想いや感情がぶつかってしまうと、話し合いが進まないことが多々あります。弁護士が介入することで、スムーズに話を進めることができます

  • 初期から弁護士が介入することで、起こりうる紛争を事前に予防することができます。

  • 相続人調査、相続財産調査をすることができます。

  • 当事務所は税務についても専門としていることから、相続財産の評価や相続税についてもまとめてご相談いただけます。

  • 当事務所は不動産会社と提携しているため、不動産の評価や任意売却の手続きもスムーズに行うことができます。

3.相続手続きの流れ

被相続人死亡

↓7日以内

死亡届の提出

↓3カ月以内

遺言書の検認、相続人の調査、遺産の調査、生命保険金の請求、相続放棄・限定承認

↓4カ月以内

所得税の確定申告

↓10カ月以内

遺産分割協議、不動産の登記、相続税の申告・納付

4.相続人とは

【相続人になる人】

相続を受ける人=相続人、亡くなった人=被相続人といいます。
相続人になる資格がある者は、配偶者・子・親・兄弟(代襲相続の場合には、子の子や兄弟の子)です。

【法定相続分】

相続人の相続の分け前は法律で決まっており、これを法定相続分といいます。(遺言、遺産分割協議によって割合を変更することができます)

相続人となるのは、配偶者(母・父)、子、親、兄弟姉妹で、配偶者は必ず相続人となります。配偶者のほかに相続人になるのは次の順位のとおりです。上位の相続人がいなければ、1つ下位が相続人となります。
第1順位 子
第2順位 親
第3順位 兄弟姉妹 

各相続人の相続分はどの順位の相続人がいるかによって変わります。
●配偶者と子が相続人の場合(子が複数の場合はその人数で按分)
  配偶者1/2  子1/2

●配偶者と親が相続人の場合(両親ともいる場合は1/2)
  配偶者2/3  親1/3

●配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合(兄弟姉妹が複数の場合はその人数で按分)
  配偶者3/4  兄弟姉妹1/4

【代襲相続人】

代襲相続とは被相続人の子が相続人になるはずのところ、子が先に亡くなっている場合に、孫が相続をすることです。
代襲相続は子、孫等の直系卑属は相続できる者にたどり着くまでどこまでもさかのぼります。これに対して、兄弟姉妹の代襲相続は、一代限りしか相続されず、兄弟姉妹の孫に相続されることはありません。
相続欠格・廃除の場合には、代襲相続は認められますが、相続放棄がなされた場合には代襲相続は発生しません。

【相続欠格・廃除】

相続欠格は、欠格事由に該当した場合に、被相続人の意思とは関係なく、相続人の相続権が失われることです。

●欠格事由

  • 故意に被相続人や他の相続人を殺害または殺害しようとしたため刑を受けた場合

  • 被相続人が殺害されたと知りながら告発等をしなかった場合

  • 詐欺・脅迫により、被相続人が遺言の作成・変更・取消しをすることを妨げた場合

  • 詐欺・脅迫により、被相続人に遺言の作成・変更・取消しを強要した場合

  • 被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した場合

相続廃除は、廃除事由に該当した場合に、被相続人の意思に基づき、相続人の相続権が失われることです。

●廃除事由

  • 被相続人に対して著しい非行があった場合(重大な犯罪や不貞行為)

  • 被相続人に対して重大な侮辱があった場合

  • 被相続人に対して虐待があった場合

【相続人の調査方法】

弁護士が戸籍を取得し相続人を調査します。一般の方は自分以外の戸籍を取得することが基本的にできないので、弁護士に調査を依頼することをおすすめします。

5.相続財産とは

【相続財産とは】

●相続財産にあたるもの
不動産・現金・預貯金等の金銭債権、生命保険金(被相続人が保険金受取人になっている場合)、株式、社債、国債、電話加入権、ゴルフ会員権(規則で相続を否定しているものを除く)、著作権等の知的財産、動産(特定されなければ対象とならない)、営業権 等々

●相続財産にあたらないもの
遺族給付金、生命保険金(相続人が保険金受取人となっている場合等)、身元保証債務、葬儀費用、香典、祭祀財産、遺骨 等々

【相続財産の分け方】

●現物分割
不動産や株式等の財産を現物のまま各相続人に分割する方法です。

●換価分割
遺産を売却して、換金し、各相続人に相続分の金額を分割する方法です。

●代償分割
特定の相続人が相続財産をそのまま現物で取得し、その人が他の相続人に相続分の金額を支払う方法です。

【相続財産の調査方法】

相続をするにあたって、対象である相続財産を確定する必要があります。相続手続き終了後に他の相続財産が見つかった場合には、一から相続手続きをやり直す必要があります。

相続調査のために一般的に被相続人の除籍謄本、相続人の戸籍謄本、相続財産の資料(通帳等)、本人確認資料(運転免許証等)が必要です。詳細は各機関に問い合わせて確認した方がいいでしょう。

●不動産
まずはご自宅にある登記権利書、登記識別情報、固定資産税の課税通知書(家にあるもの)、名寄帳、登記事項証明書、固定資産証明書(役所で取得するもの)から、相続人が所有していた不動産を調査しましょう。

固定資産評価証明書を取得することによりその不動産のだいたいの価値を確認することができます。

  • 調査するための資料

  • 登記権利書・登記識別情報

  • 固定資産税の課税通知書

  • 登記簿謄本

  • 名寄帳

  • 固定資産税

●預貯金
ご自宅で預貯金通帳やキャッシュカード等、預貯金をしている銀行の手がかりを探しましょう。もし見つからなければ、利用している可能性のある銀行に問い合わせ、預金残高証明書を発行してもらうと、預貯金額を確認することができます。預貯金通帳等がある場合にも正確な預貯金額を把握するために、預貯金残高証明書を発行してもらいましょう。

調査するための資料

  • 預貯金通帳

  • 預貯金証書

  • キャッシュカード

  • 銀行のタオル・カレンダー等のグッズ

  • 残高証明書

  • 取引明細書

●有価証券
有価証券には国債・地方債・社債・上場株式・非上場株式・受益証券があります。その有価証券の取扱機関は、証券会社・信託銀行・銀行・信用金庫・信用組合・ゆうちょ銀行等です。
これらの有価証券を調査するために、まずご自宅で預貯金通帳に記載されている国債の利息や株式の配当金等の振り込みがないか確認しましょう。その他に証券会社から四半期ごとに送られてくる各種の報告書,株主総会招集通知を探しましょう。
それでも見つからない場合には、所得税の確定申告の申立書を確認しましょう。

調査のための資料

  • 取引口座の開設案内書、約定等

  • 取引報告書、運用報告書

  • 取引残高報告書、利払い報告書

  • 株式発行会社の事業報告書

  • 株主総会招集通知書

  • 国債等の債券の保護預かり通帳

  • 銀行のタオル・カレンダー等のグッズ

  • 取引報告書、運用報告書

●生命保険
自宅で被相続人の保険証券、領収書、生命保険料控除証明書、確定申告書などを探して調査しましょう。生命保険があることが確認できたら、保険会社に解約金返戻金の評価証明書の発行を依頼しましょう。

調査のための資料

  • 保険証券

  • 領収書

  • 生命保険料控除証明書

  • 確定申告書

●債務
債務には借金や病院での治療費、入院費、滞納していた税金等があります。調査としてまずは、契約書、利用明細書、請求書、預金通帳、キャッシュカード等を探しましょう。

借金があるはずなのに手がかりが見つからない場合には、個人情報機関であるJICC、CICに問い合わせをします。
※債務が多く,相続をしたくない方は相続放棄についてご相談ください。

調査のための資料

  • 契約書

  • 請求書

  • 預貯金通帳・キャッシュカード

  • 利用明細書

【特別受益・寄与分】

特別受益とは、ある相続人が被相続人の生前に、被相続人から受けた特別な経済的利益のことをいいます。特別受益を受けた相続人は、相続時に相続分から特別受益分が減額されます。

① 相続開始時に相続財産に特別受益分を加算する
② ①の相続財産を相続分で分配し、各相続人の相続分を算出する
③ 特別受益者の相続分は、②の額から特別受益分を引いたものになります。

寄与分とは、ある相続人が被相続人の財産形成に特別な寄与があった場合に、その寄与分を相続分に加算されるものです。寄与分として認められるものとして、被相続人の事業に関する労務の提供、被相続人の事業に関する財産上の給付、被相続人の療養看護等があります。
① 相続開始時に相続財産から寄与分の額を引く
② ①の相続財産を相続分で分配し,各相続人の相続分を算出する
③ 寄与者の相続分は、②の相続分に寄与分を加算したものになります。

6.遺産分割とは

遺産分割協議の決め方として、まず任意交渉があり、それでもまとまらなければ調停、審判と手続きが進んでいきます。

任意交渉

任意交渉は相続人で話し合うことをいいます。一部又は全部の相続人が弁護士を入れて話し合いをすることも多くあります。任意交渉は相続人それぞれの意見を出しやすく、法理的な理屈とは関係なく柔軟な話し合いができます。

調停

調停では、家庭裁判所で調停員に仲介してもらいながら話し合いをしていきます。調停は判決のように強制力のある判断をすることはできませんが、調停員が公平な第三者として和解案を提案してくれたり、一部の相続人を説得してくれたりします。任意交渉でまとまらなかった場合には、このような第三者を入れて話し合いをする調停をするのがいいでしょう。

審判

審判では、調停とは違い最終的に裁判官が強制力のある判断を下します。審判においては最終的な判断までに話し合いをして、和解の検討もすることができます。

弁護士に依頼して遺産分割協議をする人の例

  • 遺言書が作成されていない、遺言書の内容が分かりにくい等の理由から相続人同士で争いが発生しそうな場合

  • 銀行の預金を引き出すために遺産分割協議書が必要だと言われた場合

  • 所在不明な相続人がいる場合

  • 相続財産を勝手に使い込んだ相続人がいる場合

  • 一部の相続人が交渉に応じない場合

7.遺留分減殺請求とは

遺留分減殺請求は、被相続人が作成した遺言書に自分の相続分が記載されていない相続人や法定された割合に足りない相続人が主張する権利です。遺留分とは相続人が最低限保証されている相続分のことなので、その最低限の額を他の相続人に請求することを遺留分減殺請求といいます。

遺留分が認められる相続人は配偶者・子・孫です。兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の割合は相続人全員で相続財産の1/2が原則で、相続人が直系尊属のみであるときは相続財産の1/3となります。遺留分減殺請求は被相続人が生前に他の相続人に贈与したものに対してもすることができます。
遺留分減殺請求の期限は、被相続人の死亡から1年間です。

弁護士に依頼して遺留分減殺請求をする人の例

  • 遺言書が作成されている場合に、複数の相続人のうち1人にだけすべての財産を相続させるという内容である場合

  • 被相続人が生前に複数の相続人がいるうちの1人に財産の一部又は全部を贈与してしまっていた場合

  • 被相続人が遺言書によって、他人に相続財産すべてを譲渡してしまった場合

8.相続放棄とは

相続放棄とは、相続人として被相続人の財産を一切もらわないための手続きです。被相続人の借金を肩代わりしたくない場合等にすることが多いです。家庭裁判所において相続放棄の申述をして相続放棄します。

一部の相続人が相続放棄をすると、その相続人はいないものとして、他の相続人の法定相続分で相続財産を分けることになります。
相続放棄の期限は、被相続人死亡から3カ月です。

弁護士を入れて相続放棄をする人の例

  • 被相続人に多額の借金がある又はあるかもしれない場合

  • 被相続人に財産もあるが、借金がその財産の額を上回りそうな場合

  • 一切相続をする気がない場合

  • 相続人間での争いに参加したくない場合

※相続財産の範囲でのみ借金を返済すればよい限定承認という手続きもあります。

9.遺言書

遺言書は、被相続人が誰にどのような割合で相続をさせるか書面により記すものです。相続人以外の人に財産を譲渡することもできます。遺言書には自筆証書、秘密証書、公正証書の3種類があります。

自筆証書

自筆証書遺言は、本人がペンを使って実際に書いてする遺言書です。本文の全文・日付・氏名を記載し、捺印を必ずする必要があります。代筆は認められません。費用がかからないことや内容を秘密にすることができますが、遺言内容が不確実で逆に争いになることや相続開始後に家庭裁判所での検認が必要となります。

秘密証書

秘密証書遺言は、誰にも見られないように公証役場で作成し、その公証役場において原本を保管するものです。秘密証書は公証役場に保管されるので安全ですが、その内容は不確実である可能性があり、相続開始後に家庭裁判所における検認手続きが必要です。

公正証書

公正証書遺言は、証人2人以上の前で公証人に遺言したい内容を伝えて、公証人が遺言書を作成し、公文書として公証役場に原本が保管されます。費用がかかりますが、公証役場に保管され、遺言内容もきちんとしたものになります。家庭裁判所での検認手続きは不要なので、その際の手間はかかりません。

弁護士を入れて遺言書を作成する人の例

  • 自分の死後に相続人間で争いが生じないか心配な場合

  • 不動産等の分配方法がわからない場合

  • 一部の相続人に多い割合で相続させたい場合

  • 相続人でない者に相続財産の一部を譲りたい場合

10.相続税について

相続税は、個人が被相続人の相続財産を相続等により取得した場合に、その取得した相続財産の価額に基づいて課されます。相続税はすべての相続人に課税されるわけではありません。相続税が課される人は課税遺産総額が相続税の基礎控除額を超える場合です。

相続税の基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の人数)
であり、相続財産の価額がこれを超えなければ相続税は課税されません。

※各相続財産の評価方法については,ご相談ください。

  • 被相続人がマンションを賃貸していた場合

  • 被相続人が企業のオーナーであった場合

  • 被相続人が都内に一軒家を所有していた場合

  • 被相続人が非上場企業のオーナーであった場合

  • 基礎控除以上の相続財産を相続した場合

  • 小規模宅地の特例等を利用したい場合